忍びの隠れ蓑、創業約380年余の老舗の餅菓子。
歴史に思いを馳せる‘おいしさの秘密’とは。
忍びの隠れ蓑、
創業約380年余の老舗の餅菓子。
歴史に思いを馳せる‘おいしさの秘密’とは。

東海道五十三次の宿場町として栄えた三重県亀山市にある、伝統的な風情が残る関宿。その場所にあるのは、徳川三代将軍・家光の時代より約380年以上続く(1642年創業)の老舗和菓子屋「深川屋 陸奥大掾(ふかわや むつだいじょう)」さん。初代・服部伊予保重により考案された餅菓子「関の戸」は、現在14代目まで継承されている。
東海道五十三次の宿場町として栄えた三重県亀山市にある、伝統的な風情が残る関宿。その場所にあるのは、徳川三代将軍・家光の時代より約380年以上続く(1642年創業)の老舗和菓子屋「深川屋 陸奥大掾(ふかわや むつだいじょう)」さん。初代・服部伊予保重により考案された餅菓子「関の戸」は、現在14代目まで継承されている。

これだけでも興味深いが、近年伊賀流忍者の末裔であることがわかり、元は忍びを隠すための和菓子屋だったというからおもしろい。位の高い人から情報を得るために高級菓子を渡していた・・・と、歴史話は深くなる一方なのだが、まずは「関の戸」のおいしさの秘密を!
これだけでも興味深いが、近年伊賀流忍者の末裔であることがわかり、元は忍びを隠すための和菓子屋だったというからおもしろい。位の高い人から情報を得るために高級菓子を渡していた・・・と、歴史話は深くなる一方なのだが、まずは「関の戸」のおいしさの秘密を!

まだ夜が明ける前の早朝、店の奥にある作業場では、年季の入った機械の音が響き渡る。大きな釜に職人がつきっきりになりつくる求肥餅とこしあん。それは江戸時代から配合や炊き方が変わらず、今日も材料は昔の単位である、貫・匁(もんめ)で量っている。
まだ夜が明ける前の早朝、店の奥にある作業場では、年季の入った機械の音が響き渡る。大きな釜に職人がつきっきりになりつくる求肥餅とこしあん。それは江戸時代から配合や炊き方が変わらず、今日も材料は昔の単位である、貫・匁(もんめ)で量っている。

赤小豆のこしあんは生餡から自家製し、水を一滴も使わず丁寧に炊き上げる。気候にあわせて2日から1週間寝かせることで、糖度は80度以上になり日持ちも長くなる。一般的なこしあんより硬く仕上がり、その風味と食感は関の戸ならではのもの。
赤小豆のこしあんは生餡から自家製し、水を一滴も使わず丁寧に炊き上げる。気候にあわせて2日から1週間寝かせることで、糖度は80度以上になり日持ちも長くなる。一般的なこしあんより硬く仕上がり、その風味と食感は関の戸ならではのもの。

求肥餅は餅粉を鉄鍋で炊き、熱い鍋肌に樫の木ベラであわせて練る。実は作業前に木ベラをカンナで削るところからはじまるのだとか。まさに長年の職人技である。ちょっとしたことに驚きがあるのが取材のいいところ。
求肥餅は餅粉を鉄鍋で炊き、熱い鍋肌に樫の木ベラであわせて練る。実は作業前に木ベラをカンナで削るところからはじまるのだとか。まさに長年の職人技である。ちょっとしたことに驚きがあるのが取材のいいところ。

餅の温度と粘りを見ながら「毎日同じことをしているようで違う、それがおもしろい」と14代目の服部さんは言う。そうして加減を見極められた出来立ての求肥餅でこしあんを包み、小さな関の戸の一粒に。
餅の温度と粘りを見ながら「毎日同じことをしているようで違う、それがおもしろい」と14代目の服部さんは言う。そうして加減を見極められた出来立ての求肥餅でこしあんを包み、小さな関の戸の一粒に。

最後に阿波の和三盆をまぶし、鈴鹿山脈の峰に降り積もる白雪に見立てたその姿は、白く美しい。口に広がるこしあんと和三盆の贅沢な甘み、求肥餅のやわらかさは、唯一無二と言っていい上品な味わいだ。
最後に阿波の和三盆をまぶし、鈴鹿山脈の峰に降り積もる白雪に見立てたその姿は、白く美しい。口に広がるこしあんと和三盆の贅沢な甘み、求肥餅のやわらかさは、唯一無二と言っていい上品な味わいだ。

その唯一無二の味を何百年も継承することは私たちの想像を超える。服部さんは、「いかに変わらずに今をどう守っていくかが課題」と老舗としての責任を感じている。しかしその言葉は決して堅くなく、「和菓子は時代のニーズを引き込むこともできる、だから続く理由がある」と、その想いに共感し、これからの楽しみを感じることができる。
その唯一無二の味を何百年も継承することは私たちの想像を超える。服部さんは、「いかに変わらずに今をどう守っていくかが課題」と老舗としての責任を感じている。しかしその言葉は決して堅くなく、「和菓子は時代のニーズを引き込むこともできる、だから続く理由がある」と、その想いに共感し、これからの楽しみを感じることができる。

最近では、他の和菓子屋さんと協力(全国銘菓にて)した御朱印ならぬ「御菓印」の活動や、関宿の文化継承など地元での貢献も熱い。
和菓子が続く理由は何だろうか。おいしさの背景に日本の文化やつくり手の想いがあることを知る、そうして伝統は続いて行くのだろう。まずはこの一粒から歴史に思いを馳せてほしい。
最近では、他の和菓子屋さんと協力(全国銘菓にて)した御朱印ならぬ「御菓印」の活動や、関宿の文化継承など地元での貢献も熱い。
和菓子が続く理由は何だろうか。おいしさの背景に日本の文化やつくり手の想いがあることを知る、そうして伝統は続いて行くのだろう。まずはこの一粒から歴史に思いを馳せてほしい。
